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栄養教育の現場から

私が考える「理想の保健指導・栄養教育(8)」


新出 真理
ヘルスサポート研究会カナン代表 管理栄養士、産業カウンセラー、女子栄養大学栄養科学研究所客員研究員・非常勤講師、東京医科大看護専門学校非常勤講師


 2008年度から、特定健診・保健指導が始まり3年目になりました。

 保健指導を続けてきた方のうち、最初は面談そのものに緊張や不安も感じていた方も、何十例か経験するうちに、面談や指導の仕方そのものへの緊張はかなり軽減していることでしょう。むしろ、2年目以降は、結果が見えてきて対象者の減量結果に喜ぶこともあれば、この方は指導対象になって3年目だ・・・と複雑な思いになっている方もいるでしょう。

 さて、色々なところで研修をさせていただいていて気がつくのが、この2年目、3年目の対象者への私たちの思いです。

 保健指導は仕事で、面談や電話、Eメールでは差はあるものの、人間関係が伴います。人間関係には相互作用があるので、私たちの対象者への気持ちが相手に伝わることも自覚しておきたいと思います。

 さて、前々回の最後に、こんな質問をしました。

 たとえば肥満の対象者にやせてほしいと思うのに、むしろ太ってきたらどう思うでしょうか?

 これは人によって異なりますね。

 相手をやせさせられない自分に気持ちが向かう場合、「自分の何が悪かったのだろう」と感じがちです。もちろん、自分の指導方法を振り返ることは大切ですが、性急に「自分の能力が低いから・・・」とか、「自分は保健指導に向いていないのかも・・・」と思いがちな場合は、ちょっと注意が必要です。

 一方、太ってきた相手に気持ちが向かう場合も、「相手はどうしてちゃんと実行してくれなかったのだろう」と感じたりしていませんか?相手がやせない原因の分析は大切ですが、単に相手の知識の少なさ、動機付けの弱さ、継続できない意思の弱さを責めるような気持ちを感じる場合は、ちょっと気をつけましょう。

 そもそも、指導を受けたら対象者は100%体重減少するのでしょうか?それを私たちは、求められているのでしょうか?

 体重の減少は、食生活と運動、睡眠はもちろん、食環境や人間関係など複雑に絡み合う生活の要素を調整する能力が必要です。多くの方は、生活の中心は健康管理ではありませんから、誰もが半年でコントロール可能になるわけではありません。私の経験でも、1回の面談ですぐ効果が現れる方もいれば、3年、5年とかかり、やっとその方法を身につけていく方もいます。

 人間の成長にはタイミングがあります。タイミングがあえば、私たちの保健指導によって対象者の生活習慣は変わるでしょうが、タイミングが合わなければ、その影響は今すぐには出ないかもしれません。

 そういう意味で、私たちは対象者に期待しすぎないことも大切です。また、指導する私たちは、うまくいかない時に、自罰や他罰に偏った見方をしていないか、自分の感じ方を点検することも大切ですし、それが私たちのストレスマネジメントにもなります。

 今日明日でできること、来週からすること、と比較的近い未来を視野に入れると同様に、数ヶ月後、数年後に期待する長い目と両方の視点を取り入れていきたいものです。


新出 真理(しんで まり)

女子栄養大学卒業後、管理栄養士として電設健保健診センター等で保健指導をしながらカウンセラー資格取得。筑波大学大学院修士課程健康教育学専攻修了と同時に開業。専門は健康教育学・栄養教育学。現在ヘルスサポート研究会カナン代表として、栄養相談、健保連巡回健保コンサルタントや大学等の非常勤講師などを務める。著書に「いちばんわかりやすい管理栄養士国家試験合格テキスト」(誠美堂出版)など。




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